土づくり 持続的な農業を目指して~JA報告から(上)
/20年ぶり実施/
「あなたは畑の土づくりに関心がありますか」
JAネットワーク十勝農産技術対策協議会が2018年、管内農家を対象に実施した土づくりに関するアンケート調査。約20年ぶりに実施されたこの調査では、最初に農家自身の土づくりへの関心を聞いている。
結果を収録した十勝管内土づくり実態調査報告書によると、「関心がある」と答えたのは全体の89%。土づくりに関して知りたい情報は「土壌病害虫に関する情報」を筆頭に、「土壌分析」「堆肥施用」「スマート農業」など。土づくりへの意識も多様化している。
事務局を務める十勝農協連は、「それぞれ重きを置くものは違っても土づくりはベース。管内農家の意識は高い」とする。
前回調査が行われたのが1999年。約20年間で、1戸当たりの耕作面積や農業者の年齢構成など、管内農家を取り巻く環境は大きく変化した。
報告書によると平均耕作面積は45・5ヘクタールで前回から14・2ヘクタール増加。全体の耕地面積はほぼ変わらない中で戸数は減少、規模拡大はさらに進んでいる。20年間で営農規模は「拡大」と回答したのが70・9%、「現状維持」は25%、「縮小」は4・1%だった。
同じように進むのが高齢化。「農林業センサス」によると、仕事として自営農業に従事する「基幹的農業従事者」は、1995年に30~59歳が63・4%を占めていたが、その割合は2015年に50・8%まで減少。60歳以上の割合は28・7%から42・4%に増加した。
【写真説明】高齢化や耕作面積の増加が続く十勝農業。天候不順の年も増える中、土づくりの重要性が増している
/消極派6ポイント増/
今調査で土づくりへの意識の高さが見えた一方、「関心がある」と答えた89%は前回比で6・1ポイントダウンした。「どちらでもない」「関心がない」を合わせると11%で6・1ポイント増え、関心がない理由として「高齢化のため」との意見もみられた。
この比較のみで土づくりへの関心が薄れているとは言えないが、農業を取り巻く課題は、土づくりの意欲に影響を及ぼしていく可能性がありそうだ。
これに対し専門家は、近年、土づくりの重要性が増しているとする。台風、干ばつ、日照不足などの異常気象が背景にある。
帯広畜産大・グローバルアグロメディシン研究センターの谷昌幸教授は、「土づくりをすることは収量を上げることではなく、収量のポテンシャルに近づけること。人がコントロールできない要因(気象)に左右されず、収量を安定化させるために重要なのが土づくり」と説いている。
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JAネットワーク十勝農産技術対策協議会がまとめた報告書を基に、管内農家の土づくりに対する意識や現状を探った。(中島佑斗)
<十勝管内土づくり実態調査報告書>
土づくりの現状把握と課題点を整理するため2018年に実施。管内24JA正組合員の農家(酪農・畜産専業を除く)から約1180戸を抽出してアンケートを配布、331戸から回答を得た。同様の調査は1976年、88年、99年にも行っている。